清泉小だより

友のために自分の命を捨てること、これ以上に大きな愛はない

11日はクリスマスの集い、来週は2学期の終業式を迎えます。2学期前半は、とても暑い日が続いていましたが、今は寒さが身にしみる冬がやってきました。「お友だちを大切に」過ごせましたか。自分中心に考えていませんでしたか。周りの方の気持ちや状況を想像して、ことばや態度で表せていましたか。

今、私は、6年生と面接をしています。「清泉小学校で大切にしてきたことは何でしたか。」と質問した時に、全員が「お友だちを大切にという学校で大事にしていることを実践してきました。」と答えました。そして、「お友だちに嫌な思いをさせないようにしました」「『お友だち』の意味の深さを考えながら過ごしました。」「自分よりお友だちを優先しました。」「困っている低学年のお友だちに積極的に声をかけました。」「お友だちと意見がぶつかっても、こういうことを言ったら嫌だろうなと思いながら、話しました。」と次々に実践してきたことをお話ししてくれました。相手の気持ちに寄り添おうとする優しさや、心の広さを感じました。そんな思いやりのあふれる6年生と学校生活を送れるのも、残り53日ほどです。「お友だちを大切に」、皆さん一人ひとりの温かい心を渡していきましょう。

今年度は、清泉で大切にしている10の価値の中の「生命」について考えています。
今日は、前回のマキシミリアノ・マリア・コルベ神父様のお話の続きをします。

いまから130年ほど前にポーランドでお生まれになったコルベ神父様は、36歳で長崎に上陸され、お金もない、日本語も知らない中、それでもイエス様のお導きで、長崎彦山の中腹、本河内に聖母の騎士修道院を開きました。結核を患いながらの6年間の日本での生活でしたが、ご自分の生命をキリスト教の布教に捧げられました。

日本を後にし、コルベ神父様は帰国されます。その後第二次世界大戦中、コルベ神父様の話すカトリックの教えとナチスの思想は相反するとして、コルベ神父様達はブラックリストに載せられてしまいました。コルベ神父様はついに捕らえられ、アウシュビッツの強制収容所へと送られてしまうのです。そこでは、少しでも働ける者は重労働を、働けないものはガス室に送られ命を奪われていました。毎日毎日、大勢の人が亡くなりました。食料不足、寒さ、不衛生によって病気になって死んでいく人もたくさんいました。

コルベ神父様は若い神父様たちを励まし続けました。「私はここを生きて出ることはできません。しかしあなた方は帰れます。気を落としてはいけません。聖母マリアが必ずあなた方を助けてくださいます。」時に、神さまのお話を人々に語ることもありました。極限状態でもコルベ神父様は、周りの方のために尽くされていました。

ある日、一人の仲間が逃げ出しました。それをきっかけに、その日は暑かったにもかかわらず水を一滴も与えられず、照りつける日差しの中、コルベ神父様たちはずっと立たされていました。何人もの人が倒れる中、収容所の所長が言いました。「逃げたやつは見つからない。10人をこれから選ぶ。そいつらはみせしめに飢えて死んでもらわねばならない。」所長は気まぐれに10人を選んでいきます。人を人として全く扱っていません。

その中の一人が泣き叫びました。「ああ、かわいそうな妻と子ども達」

その時、一人の男性が前に出ました。

「あの人の身代わりになりたいのです。」

「お前は誰だ。」

「カトリック司祭です。私には家族がありませんから。」

一歩前に出てそう話されたのは、コルベ神父様でした。

所長は一瞬黙りました。かつて体験したことがない場面だったからです。

「よかろう。」

人々の列が2列に分かれました。生きる人の列と、死に行く人の列に。

第11号棟の地下牢に裸で放り込まれた人たちは、絶望の底で死の恐怖や苦しみと闘いました。そんな中でもコルベ神父様は、なつかしい思い出、家族のことを人々とともに語り、祈り、歌い、皆を勇気づけました。一人、また一人と亡くなり、とうとうコルベ神父様だけが残りました。15日目、とうとうコルベ神父様は毒薬を注射されてしまいます。47年の生涯でした。

コルベ神父様に身代わりになってもらった方は、奇跡的に生きて帰りました。残念なことに2人の息子は戦争で亡くなっていましたが、自分の生命を差し出したコルベ神父様の行為は、広く世界に知られるようになっていったのです。コルベ神父様は「友のために自分の命を捨てること、これ以上に大きな愛はない」という聖書の言葉を、この世で生きて見せたのです。1982年10月、ローマ法王庁はコルベ神父様を聖人にあげられました。

コルベ神父様を通して、自分より他者を優先する愛が伝わってきます。どんなに過酷な状況でも神さま、マリア様に身を委ねたコルベ神父様の信仰の強さを感じます。

人は本来、優しさも持ち合わせていますが、戦争となると、人を人として見ず、生命への尊重の念も消え、正しい考えを失ってしまいます。みんな神さまから愛され大事にされている人であり、生命です。生命の大切さを改めて心深く考え、私たちにできる「お友だちを大切に」を実行してまいりましょう。

参考文献「コルベ神父物語」曽野綾子著 聖母の騎士社

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